REFORM COLUMN

害獣を勝手に駆除すると違法?捕獲できない動物と正しい対処法を解説

2026.10.23

天井裏から物音がする、庭が荒らされている、家の周りで見慣れない動物を見かけた。そんな時、「自分で何とか捕まえて対処しよう」と考える方も少なくないでしょう。しかし、家屋に被害をもたらす動物であっても、一般の方が自己判断で勝手に捕獲・駆除してしまうと、法律違反になるケースがほとんどです。

日本では「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」により、原則としてすべての野生鳥獣(哺乳類・鳥類)の無許可捕獲が禁止されています。ハクビシンやタヌキはもちろん、特定外来生物であるアライグマなども含め、一般的に「害獣」と呼ばれる動物の多くがこの規制の対象となっており、適切な手続きや許可なく捕獲・殺傷すると、重い罰則が科される可能性があります。

本記事では、勝手に捕獲・駆除してはいけない害獣に関する法律のルール、例外的に駆除が認められているケース、そして実際に害獣被害に遭った際の正しい対処法について詳しく解説します。

鳥獣保護管理法とは?害獣でも無許可の捕獲が禁止されている理由

鳥獣保護管理法は、野生鳥獣の保護と管理を図り、生態系のバランスを保ちつつ農林業被害などを防ぎ、狩猟を適正化することを目的とした法律です。この法律の大きな特徴は、家ネズミ3種(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ)など一部の例外を除き、原則としてすべての野生哺乳類・鳥類の無許可捕獲を禁止している点(第8条)です。

たとえ自分の所有地内であっても、また家屋に侵入したり庭を荒らしたりして実害が出ている場合であっても、「害獣だから」という理由だけで勝手に捕獲したり殺傷したりすることは認められていません。ここでいう捕獲には、直接生け捕りにする行為だけでなく、毒餌や罠で傷つけること、野鳥の卵を採取することなども含まれます。

生態系全体のバランスを保ち、無秩序な乱獲や誤った捕獲事故を防ぐため、駆除を行うには自治体への申請・許可(有害鳥獣捕獲)や、法令に則った狩猟免許・登録手続きが必要と定められています。

参照:野生鳥獣の捕獲について|鳥獣保護管理対策|東京都環境局

勝手に捕獲・駆除してはいけない主な害獣

家屋や敷地内、農地に侵入して被害をもたらす野生動物の多くは、鳥獣保護管理法や外来生物法の規制対象です。

  • ハクビシン
  • アライグマ
  • タヌキ・イタチ
  • アナグマ(ニホンアナグマ)
  • コウモリ(アブラコウモリなど)
  • 鳩・カラス・ツバメなどの野鳥
  • ヌートリア・モグラ

ここでは、特に一般住宅周辺で被害報告が多く、勝手な捕獲・駆除が禁じられている代表的な生き物について解説します。

ハクビシン

天井裏に住み着いて同じ場所にフン尿を溜める「ため糞」や、断熱材の破損、家庭菜園の食害などを引き起こす代表的な害獣です。ハクビシンは狩猟鳥獣に指定されていますが、狩猟免許や登録手続き、狩猟期間などの法的要件を満たさない限り、自宅敷地内であっても罠を仕掛けて勝手に捕獲することはできません。

アライグマ

北米原産の外来種で、愛らしい外見とは裏腹に気性が荒く、家屋侵入や農作物被害が深刻化しています。外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定されており、国や自治体による防除が進められていますが、一般個人が無許可で自由に捕獲してよいわけではありません。

鳥獣保護管理法による捕獲規制に加え、外来生物法によって「生きたままの運搬・飼育・放逐」が厳禁とされているため、捕獲後の移動や処分も含めて自治体への相談が必須です。

タヌキ・イタチ

タヌキは庭先の掘り返しや床下への侵入、フン害などを引き起こしますが、鳥獣保護管理法により無許可の捕獲・殺傷が禁止されています。

イタチ(シベリアイタチ・チョウセンイタチなど)は屋根裏の狭い隙間(2〜3cm程度)から容易に侵入し、激しい悪臭や騒音被害をもたらします。イタチはオスが狩猟鳥獣である一方、メスは非狩猟鳥獣として保護されている地域が多く、外見だけで雌雄を判別するのは極めて困難です。

狩猟期間外の捕獲はもちろん違法となるため、自己判断での罠設置は絶対に避けてください。

アナグマ(ニホンアナグマ)

ずんぐりとした体格と強力な前足の爪を持ち、建物の床下や基礎周り、庭の土手を掘り返して巣穴を作る被害が多発しています。タヌキと誤認されることも多いですが、アナグマも鳥獣保護管理法の規制対象です。自治体の有害鳥獣捕獲許可や正規の狩猟手続きがない状態での捕獲・殺傷は違法となります。

コウモリ(アブラコウモリなど)

「家コウモリ」とも呼ばれるアブラコウモリは、わずか1〜2cmほどの換気口や瓦の隙間から天井裏・壁の内部に侵入します。大量のフンによる悪臭やダニの発生、夜間の羽音・鳴き声が問題となりますが、コウモリも鳥獣保護管理法で保護されている野生鳥獣です。

市販の粘着シート等で捕獲・殺傷することはできず、対策は「専用忌避スプレー等による追い出し」と「侵入口の封鎖」に限定されます。

鳩・カラス・ツバメなどの野鳥

ベランダへのフン害をもたらすドバトや、ゴミ集積所を荒らすカラス、軒下に巣を作るツバメやスズメなどの野鳥も、すべて鳥獣保護管理法の対象です。成鳥の捕獲・殺傷が禁止されているだけでなく、「卵やヒナがいる巣」を勝手に撤去・破壊することも同法違反となります。

巣の撤去が許可なく認められるのは、ヒナが巣立ち「卵もヒナもいない空の巣」になった段階に限られます。

ヌートリア・モグラ

ヌートリアは西日本を中心に水辺近くの畑や庭を荒らす特定外来生物であり、アライグマ同様に鳥獣保護管理法(捕獲制限)と外来生物法(生体運搬等の禁止)の双方が適用されます。モグラは芝生や庭土を掘り起こして美観や作物の根を傷めますが、鳥獣保護管理法上の野生鳥獣です。

農業・林業の事業活動に伴いやむを得ず捕獲する場合を除き、一般家庭の庭に現れたモグラを個人が勝手に罠で捕殺することは認められていません。

例外的に無許可で駆除が認められるケース

原則として捕獲が禁じられている野生鳥獣ですが、法律上、明確に例外とされているケースが存在します。

1. 家ネズミ3種(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ)

環境衛生上の観点から、鳥獣保護管理法の適用除外とされています。市販の粘着シート、捕獲カゴ、殺鼠剤などを用いて、個人が自治体の許可なく捕獲・駆除することが可能です。

ただし、床下や屋根裏で物音がする場合、家ネズミではなくハクビシンやコウモリ、アライグマなどが侵入しているケースも多いため、相手が特定できていない状態での安易な罠設置は禁物です。

2. 農業・林業の事業に伴うモグラ・野ネズミの捕獲

鳥獣保護管理法施行規則(第12条第1項第1号)に基づき、農業または林業の事業活動に伴いやむを得ない場合に限り、モグラ科全種およびネズミ科(野ネズミ)の捕獲・駆除は許可を要しないと定められています。あくまで事業活動に伴う被害防止を目的とした規定であるため、一般住宅の庭やベランダに現れたモグラを趣味・家庭レベルで捕獲する場合には適用されません。

無許可で捕獲した場合の罰則

鳥獣保護管理法に違反して無許可で野生鳥獣を捕獲・殺傷した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、特定外来生物を生きたまま運搬・保管した場合は、外来生物法違反としてさらに重い刑事罰が科される恐れもあります。

「自分の敷地に入ってきたから」「生活に実害が出ているから」といった理由であっても、法的な正当化事由にはならず、知らずに罠を設置して摘発される事例もあります。リスクを避けるためにも、正規の手順に沿って対応することが不可欠です。

害獣被害に気づいた時の正しい対処法

害獣を発見した際、法令を守りながら根本的に被害を止めるための主な相談先は以下の2つです。

自治体(市役所・区役所)に相談する

各自治体の環境課や農林水産課などの鳥獣対策窓口へ相談すると、有害鳥獣捕獲の許可申請手続きや、地域に応じた防除マニュアルの案内を受けられます。

自治体によっては、箱わなの貸し出しや、提携する猟友会・専門業者の斡旋を行っている地域もあります。「屋根裏に何かがいるが何の動物か分からない」という初期段階でも、まずは窓口でアドバイスを受けることが可能です。

専門の害獣駆除業者に依頼する

天井裏や床下の狭所作業、衛生面でのリスク、確実な対処を求める場合は、専門業者への依頼が現実的です。

専門業者は必要な許可を取得した上で捕獲・駆除を行うだけでなく、フン尿の清掃・消毒、そして最も重要な「侵入経路の特定と完全な封鎖」まで一貫して行います。現地調査や見積もりを無料で行っている業者も多いため、複数の業者から提案内容を比較検討すると安心です。

害獣を寄せ付けないための予防策

法律の制約を受けずに個人が今すぐできる最も効果的なアプローチは、「捕獲」ではなく「追い出し」と「侵入防止」です。

  • 忌避剤や強い光・音による追い出し:動物を傷つけずに敷地外へ退避させる行為は捕獲にあたりません。
  • 餌場の排除:生ゴミを屋外に放置しない、ペットフードを放置しない、庭の落果を拾う。
  • 侵入経路の物理的な遮断:床下の通気口、屋根の隙間、換気扇、配管導入部などを金網や防獣プレートで塞ぐ。

特に築年数が経過した住宅では、屋根や外壁に数センチの隙間が生じ、そこがハクビシンやイタチの侵入口になりがちです。侵入経路の隙間封鎖は、リフォーム工事によって建物の構造から根本的に解決することも可能です。

まとめ|勝手な捕獲は避け、追い出しと侵入対策を優先に

ハクビシン、アライグマ、タヌキなど、身近な害獣の多くは鳥獣保護管理法によって無許可の捕獲が厳しく規制されています。許可なく捕獲・駆除できるのは原則として家ネズミ3種(および農林業従事者によるモグラ等の例外)に限られます。

被害が出ているからといって自分で罠を仕掛けるのではなく、まずは忌避剤等による追い出しや侵入経路の遮断を行うか、自治体への申請・専門駆除業者への相談を検討してください。