加齢にともなって足腰が弱くなったり、家の中での転倒リスクが高まったりすると、これまで不便なく暮らせていた住まいが一気に暮らしにくく感じられることがあります。そうした課題を解決する方法のひとつが、住宅のバリアフリーリフォームです。
段差をなくしたり手すりを設置したりするだけでも、移動の負担を減らし、安心して日常生活を送れるようになります。
本記事では、バリアフリーリフォームで実際に行われる工事の内容や費用の目安を詳しく解説。さらに、リフォームを検討する際に押さえておきたいポイントも紹介します。
これからバリアフリー化を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
バリアフリーへのリフォーム内容と費用
住宅をバリアフリーにリフォームする際には、主に以下の5つの工事内容があります。
- 段差解消
- 手すり設置
- ドアの変更
- 床材の変更
- 間取り変更
バリアフリーにリフォームする際には、高齢者の身体の状態に合わせて工事内容を決定する必要があります。上記の工事内容を詳しく解説しつつ、費用についても簡単に紹介します。
段差解消
バリアフリーのリフォームの中には、段差解消があります。段差解消は、玄関などの大きな段差からフローリングと和室の間にある数センチの段差も対象となります。
段差解消の目的は、段差につまずいて転倒しないようにするためと筋力低下のために段差が乗り越えられない場合にスムーズに移動ができるようにするためが挙げられます。
段差解消の方法には、スロープを設置する方法と完全に段差を解消しフラットにする方法があります。段差が大きい場合にはスロープが用いられ、段差が小さい場合にはフラットにする方法が用いられます。
段差解消工事に掛かる費用は、以下のようになります。
- 段差を解消しフラットにする場合:2万円〜15万円
- 玄関の段差にスロープを設置する場合:15万円〜20万円
- 玄関の外にスロープを設置する場合:40万円〜60万円
段差の高さであったり、住宅の中で段差解消をしなければならない箇所の数であったりで費用は大きく変化するため、見積もりを十分に確認するようにしましょう。
手すり設置
バリアフリーのリフォームの中には、手すりを設置する工事があります。
手すりを設置する場所としては、玄関や廊下、トイレ、浴室などが対象となる場合がほとんどです。
手すりを設置する目的は、廊下であれば移動の際に転倒しないようにするためであり、トイレや浴室の場合には、立ち上がりなどの際の支えにするためです。
手すり設置に掛かる費用は、設置する場所や手すりの形状、長さが変わります。費用の目安を紹介します。
- 玄関に手すりを設置する場合:1万円〜4万円
- トイレに手すりを設置する場合:1万円〜5万円
- 浴室に手すりを設置する場合:2万円〜5万円
- 廊下に手すりを設置する場合:3万円〜10万円(長さにより変動する)
手すりの設置は、複数の箇所になる場合がほとんどのため、設置する前に必要な手すりかどうかを十分に検討しておく必要があります。
ドアの変更
バリアフリーのリフォームには、トイレや居室などのドアの変更も含まれます。
一般的に多く使われている開き戸の場合、開閉しにくかったり、転倒したりする可能性があるため、引き戸に変更するリフォームしてバリアフリーにします。
ドアを変更する箇所としては、頻繁に使用する玄関やトイレが一般的です。特に、トイレのドアは最も出入りする箇所となるので、引き戸にして出入りがしやすいような工夫が必要です。
ドアを変更するリフォームをする際の費用は、トイレと玄関で異なります。
- トイレのドアを引き戸に変更した場合:10万円〜30万円
- 玄関のドアを引き戸に変更した場合:30万円〜60万円
玄関のドアはトイレのドアと比べるとサイズが大きいだけでなく、防犯性や機能性が必要なため、ドア本体の価格が高くなります。
床材の変更
バリアフリーへのリフォームには、床材の変更が含まれます。
クッション性の高い素材の床材に変更すると、転倒した際にケガがしにくくなるだけでなく、滑りにくく加工すると転倒の防止にも役立ちます。
また、車椅子生活になった場合には、畳での車椅子操作は困難なため、フローリングに変更するリフォームを行います。
フローリングに変更するリフォームをした場合の費用相場は以下のとおりです。
- フローリングへの変更:9万円〜18万円
- クッションフロアへの変更:4万円〜10万円
フローリングへの変更は、広さであったり、変更する場所の数であったりで費用は大きく異なるため、事前に見積もりを確認しておく必要があります。
間取り変更
バリアフリーへのリフォームには、間取りの変更も含まれます。
間取りの変更をする目的は、室内の移動に時間が掛かる高齢者がすぐにトイレや居室に移動できるようにするためです。
また、2階への移動が難しくなり、1階のみでの生活になった場合にも間取りを変更するリフォームを行います。
間取りを変更する際の費用相場は、工事の内容により大きく異なります。
- 仕切り壁の撤去:5万円〜20万円
- 廊下幅の拡張:30万円〜100万円
- 和室から洋室への変更:40万円〜80万円
間取りの変更は他のバリアフリーのリフォームよりも高額になるため、リフォーム後の生活を十分に想定した上でリフォームをしなければなりません。
バリアフリーへのリフォームする際のポイント
住宅をバリアフリーにリフォームする際には、以下の4つの抑えておくべきポイントがあります。
- 必要な箇所を十分に検討する
- 同居する家族の生活も考える
- 予算に合わせて優先順位を決める
- リフォーム業者の選定は慎重に
上記のポイントを抑えておかないと、リフォームした後に住みにくい住宅になってしまったり、コストが余計に掛かかってしまったりする可能性があるため、十分に理解しておかなければなりません。
それぞれのポイントを詳しく解説します。
必要な箇所を十分に検討する
バリアフリーにリフォームをする際には、必要な箇所を十分に検討した上で決定する必要があります。
住宅の全てをリフォームしようとすると、変更する箇所は限りなく多くなる可能性があるため、リフォーム後の生活を想定しながら必要なリフォームかどうかを十分に検討しなければなりません。
無駄なリフォームを行うと、コストが掛かるだけでなく、生活がしにくくなる可能性があるため、家族で十分に話し合っておきましょう。
同居する家族の生活も考える
バリアフリーにリフォームをする場合には、高齢者のことだけでなく家族の生活も考えてリフォームをしなければなりません。
高齢者だけのためだけにリフォームを設計してしまうと、家族が生活しにくくなる可能性が高いためです。
家族の生活リズムや動線なども考慮した上でリフォームを設計するようにしましょう。
予算に合わせて優先順位を決める
バリアフリーにリフォームをする場合には、予算に合わせてどの工事を優先的に行うかを決めておく必要があります。
必要な箇所を全てリフォームしようとすると金額も高くなるためです。
リフォーム後の生活を想定して、本当に必要かどうかを見極めた上で、予算と相談しながらどこをリフォームするか優先順位を決めると良いでしょう。
リフォーム業者の選定は慎重に
バリアフリーにリフォームをする場合には、リフォーム業者の選定は慎重にならなければなりません。
リフォーム業者によって施工の丁寧さや金額が異なるため、見積もりを出してもらう前にバリアフリーへのリフォームの実績があるかどうかや口コミを確認しておくようにしましょう。
また、適正な金額を知るためにも複数の業者に見積もりを依頼すると良いでしょう。3社程度の業者に見積もりを依頼して、適正な金額を知った上で、業者を選定すると安心して工事を依頼できます。
まとめ
今回は、住宅をバリアフリーにリフォームする際の工事内容や費用を解説しつつ、リフォームする際のポイントについても解説しました。
バリアフリーのリフォーム内容には、段差解消や手すりの設置、建具の変更、間取りの変更などがあります。工事の内容を決める際には、予算だけでなく、本当に必要なリフォームかどうかを十分に検討しなければなりません。
また、バリアフリーの内容を決定する際には、一緒に生活する家族が住みにくくならないかも事前に確認が必要です。
リフォーム会社を選ぶ際にも注意が必要です。バリアフリーへのリフォーム実績がある業者であったり、口コミを確認したりして優良な業者を選ばなければ費用が高額になってしまう可能性があります。そのため、見積もりを出してもらう際には複数の業者に見積もりを依頼して適正な価格を把握しておきましょう。
バリアフリーへのリフォームは、高齢者が生活しやすくなるために必要な工事となるため、本記事で紹介したポイントを抑えつつ、後悔のないリフォームにしてください。