近年の観光需要の高まりにより、民泊事業への注目が集まっています。民泊運営を成功させるためには、ゲストが快適に過ごせる環境づくりが欠かせません。また、建築基準法や消防法などの法規制への適切な対応も求められるため、一般的な住宅リフォームとは異なる専門的な知識が必要になります。
そんな民泊事業をお考えの方におすすめなのが、民泊に特化した「民泊リフォーム」です。適切な工事を行うことで、ゲストに選ばれる魅力的な宿泊施設に生まれ変わらせることができ、安定した収益性の向上も期待できます。
この記事では、民泖リフォームに必要な工事内容から費用相場、利用できる補助金制度まで詳しく解説します。
民泊リフォームで必要な工事内容
民泊施設として成功するためには、ゲストが快適に滞在できる環境を整えることが欠かせません。一般的な住宅を民泊として活用する場合、主に4つのカテゴリーの工事が必要になります。
- 水回り設備の改修・増設
- 内装工事(床・壁・天井)
- 安全・防犯対策工事
- Wi-Fi・電気設備の強化
これらの工事は、ゲストの利便性向上だけでなく、法的要件への適合や施設の差別化にも直結します。ここでは、民泊リフォームで特に重要とされる工事内容について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
水回り設備の改修・増設
民泊において水回り設備の充実は、ゲストの満足度を大きく左右する要素です。
既存の浴室やトイレが古い場合は、清潔感のある現代的な設備への交換が必要になります。特に浴室については、シャワーヘッドの交換や浴槽の新設、換気扇の強化などを行うことで、ゲストにとって快適な入浴環境を提供できるでしょう。
複数のゲストが同時に利用することを考慮して、トイレの増設や洗面所の拡張工事を行うケースも多く見られます。特に一棟貸しタイプの民泊では、2階建ての場合に各階にトイレを設置することで、利便性が大幅に向上するでしょう。
内装工事(床・壁・天井)
民泊施設の内装は、ゲストの第一印象を決定づける重要な要素であり、清潔感と機能性を両立させることが求められます。
床材については、清掃のしやすさを重視してフローリングやクッションフロアを選択することが一般的です。特に、汚れや傷に強い材質を選ぶことで、メンテナンスコストの削減にもつながります。和室がある場合は、洋室への変更を検討することで、より多くのゲストに対応できます。
壁と天井のクロス張り替えでは、明るく清潔な印象を与える色合いを選択し、汚れが目立ちにくい機能性クロスの使用がおすすめです。また、防臭・抗菌機能付きのクロスを選ぶことで、快適な室内環境を長期間維持できます。
安全・防犯対策工事
民泊施設では、不特定多数のゲストが利用するため、一般住宅以上の安全・防犯対策が必要になります。
例えば、消防法に基づく設備として、火災報知器や消火器の設置が義務付けられています。延床面積や収容人数に応じて、自動火災報知設備や避難器具の設置が必要になる場合があるので注意しましょう。これらの設備は、法的要件を満たすだけでなく、ゲストの安全確保のためにも不可欠です。
防犯面では、玄関ドアの電子錠化やセキュリティカメラの設置が効果的です。スマートロックの導入により、チェックイン・チェックアウトの自動化も可能になり、運営効率の向上にもつながります。また、窓には防犯フィルムの貼付や補助錠の設置を行うことで、セキュリティレベルを向上させることができます。
Wi-Fi・電気設備の強化
現代の民泊運営において、安定したインターネット環境の提供は必須条件となっています。
Wi-Fi設備については、高速で安定した通信環境を確保するため、光回線の導入や無線ルーターの増設が必要になります。複数の部屋がある場合は、各部屋で十分な通信速度を確保できるよう、中継器の設置や有線LAN配線の追加も検討しましょう。
電気設備では、複数の電子機器の充電に対応できるよう、コンセントの増設をしておくと、ゲストに喜んでもらえるでしょう。特に、ベッドサイドやデスク周辺、リビングエリアには十分な数のコンセントを確保することで、利便性が大幅に向上します。USB充電ポート付きのコンセントを設置することも、ゲストに喜ばれるサービスの一つです。
工事箇所別|民泊リフォームの費用相場
民泊リフォームにかかる費用は、施工する箇所や工事の範囲、使用する設備のグレードによって大きく変わります。ここでは、各工事箇所の詳しい施工内容と費用相場をご紹介します。
工事箇所 | 工事内容 | 費用相場 | 工期目安 |
水回り設備 | ユニットバス交換・洗面台新設 | 80~150万円 | 3~5日 |
トイレ交換・ウォシュレット設置 | 20~40万円 | 1~2日 | |
給湯器交換・配管工事 | 30~60万円 | 1~2日 | |
内装工事 | フローリング張り替え(6畳) | 15~30万円 | 2~3日 |
壁・天井クロス張り替え(6畳) | 8~15万円 | 1~2日 | |
和室→洋室変更工事 | 30~60万円 | 3~5日 | |
安全・防犯対策 | 火災報知器・消火器設置 | 10~25万円 | 1日 |
電子錠・セキュリティ設備 | 15~40万円 | 1~2日 | |
防犯カメラシステム | 20~50万円 | 1~2日 | |
電気・通信設備 | Wi-Fi環境整備・光回線工事 | 5~15万円 | 1日 |
コンセント増設・照明工事 | 10~25万円 | 1~2日 | |
スマート家電導入 | 15~35万円 | 1日 |
また、物件規模別の総費用目安は以下の通りです。
- 1K・1DK(25㎡程度):150~300万円
- 1LDK・2DK(40㎡程度):250~450万円
- 2LDK・3DK(60㎡程度):350~600万円
- 一棟貸し(80㎡以上):500~1,000万円
費用に影響する主な要因として、設備のグレードや既存設備の状況が挙げられます。例えば、高級感を演出するため上位グレードの設備を選択したり、築年数の古い物件で配管や電気配線の全面更新が必要になったりする場合は、費用が大幅に上昇することがあります。
正確な費用を把握するには、複数の専門業者から見積もりを取得し、現地調査を受けることが大切です。業者によって見積もり金額や施工内容が異なるので、目的やニーズに合わせてしっかり比較検討するのが良いでしょう。
民泊リフォームで利用できる補助金制度
民泊リフォームにかかる初期費用は決して安くありませんが、国や自治体が実施している各種補助金制度を活用することで、負担を大幅に軽減することが可能です。ここでは、民泊事業者が利用できる主要な補助金制度について詳しく解説します。
国・自治体の空き家活用補助金
多くの自治体では、空き家の有効活用を促進するための補助金制度を設けており、民泊への転用も対象となる場合があります。これらの補助金は、地域の空き家問題解決と観光振興を同時に図ることを目的としています。
例えば、事業再構築補助金では、建物費や機械装置、システム構築費といった民泊に関連するさまざまな経費が補助対象となっており、民泊事業者にとってベーシックな補助金です。成長枠はインバウンド向け限定、物価高騰・回復再生応援枠は国内観光客向けの民泊に適用されます。補助上限は従業員数によって異なりますが、従業員が5人以下でも最大1000万円の補助金を受け取ることが可能です。
また、各自治体独自の制度として、古民家の再生に補助金を支給している自治体もあります。古民家をリフォームして民泊経営を検討している方は、所在地の自治体ホームページを確認してみることをおすすめします。
参照:事業再構築補助金
観光庁の宿泊施設整備支援
観光庁では、宿泊施設の質向上とサステナビリティ強化を目的とした複数の補助金制度を実施しています。
例えば、宿泊施設サステナビリティ強化支援事業は、宿泊施設における省エネ設備等の導入に要する経費の一部を助成する制度で、補助金の上限金額は1,000万円、補助率は1/2です。省エネ型空調や省エネ型ボイラー・配管、太陽光発電・蓄電設備、節水トイレ、照明機器などが補助対象となるため、民泊施設の環境負荷軽減と運営コスト削減を同時に実現できます。
また、観光地・観光産業における人材不足対策事業では、宿泊施設の省力化や業務効率化を支援しており、民泊運営の自動化・DX化に活用できるでしょう。
これらの観光庁補助金は、早く申請をした事業者から審査され、採択事業者が選定されるため、早めに申請をした方が有利とされています。
参照:
収益物件のリフォームで押さえておきたいポイント
民泊は投資用収益物件として運営するケースが多いため、一般的な住宅リフォームとは異なる視点が必要になります。ここでは、収益性を最大化するためのリフォームのポイントをご紹介します。
投資回収期間を考慮した設備選択
民泊経営では、リフォーム費用をいかに早く回収できるかが重要な指標となります。高額な設備投資を行っても、宿泊料金に反映できなければ投資効果は低くなってしまいます。設備選択の際は、ゲストの満足度向上に直結し、かつ差別化要素となるものを優先的に検討しましょう。
例えば、最新の家電製品やスマート設備は魅力的ですが、故障リスクやメンテナンス費用も考慮する必要があります。一方、清掃しやすい床材や汚れに強い壁材などは、長期的な運営コストの削減につながる実用的な投資といえるでしょう。
稼働率向上につながる差別化要素
競合他社との差別化を図るため、ターゲットとするゲスト層に応じた特色のあるリフォームも効果的です。ファミリー向けであれば安全性を重視した設備、ビジネス利用者向けであれば作業環境の充実、インバウンド向けであれば多言語対応やWi-Fi環境の強化などが考えられます。
また、SNS映えする内装デザインや、地域の特色を活かしたインテリアなども、ゲストの満足度向上と口コミ効果による集客につながる重要な要素です。
メンテナンス性を重視した素材選び
民泊施設は不特定多数の利用者が使用するため、通常の住宅よりも劣化や汚れが進行しやすい傾向があります。そのため、耐久性が高く、清掃やメンテナンスがしやすい素材を選択することが、長期的な収益性確保のカギとなります。
床材であれば傷や汚れに強いもの、壁材であれば部分的な補修が可能なもの、設備機器であれば故障しにくく修理対応が充実しているものを選ぶことで、運営コストを抑制できるでしょう。
まとめ|民泊リフォームを検討する際は実績豊富な専門業者に相談しよう
民泊リフォームは、空き家の有効活用や副収入の獲得を実現する効果的な手段です。水回り設備の充実、内装工事、安全・防犯対策、Wi-Fi・電気設備の強化を適切に組み合わせることで、ゲストに選ばれる魅力的な宿泊施設に生まれ変わらせることができます。
本記事で解説したように、民泊リフォームには一般的な住宅リフォームとは異なる専門的な知識が必要です。建築基準法や消防法などの法的要件への対応、ゲスト目線での設備選択、さらには補助金制度の活用まで、多角的なアプローチが求められます。
また、初期費用を抑えたい場合は、事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金、観光庁の宿泊施設サステナビリティ強化支援事業など、様々な補助金制度を活用してみてください。
名古屋市を拠点にリフォームを手がけるニノス株式会社では、民泊リフォームにも豊富な実績があり、法規制対応から補助金申請サポートまで、トータルでお客様をサポートしています。経験豊富なスタッフが、収益性の高い民泊施設づくりを丁寧にお手伝いいたします。
「空き家を民泊として活用したい」「法的要件を満たす安全な民泊施設を作りたい」「補助金を活用してコストを抑えたい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ニノスにご相談ください。