REFORM COLUMN

リノベーション賃貸で失敗しないために!賃貸オーナーが後悔しやすいポイントと対策を解説

2025.12.15

近年、空室対策や家賃アップを目的に「リノベーション賃貸」に取り組むオーナーが増えています。デザイン性の高い部屋は入居者の反響も良く、競合との差別化にもつながるため、有効な投資手法のひとつです。

しかしその一方で、

「内装だけリニューアルしたけれど、すぐに設備トラブルが発生した」
「想定した家賃アップ効果が出ず、投資回収が進まない」

といった“リノベ失敗例”も多く見られます。リノベーション賃貸は見た目の印象だけでは判断できず、建物性能・構造・設備更新の計画まで考慮しないと収益に悪影響を及ぼします。

この記事では、賃貸オーナーがリノベーションで後悔しやすいポイントと、その対策をわかりやすく解説します。

リノベーション賃貸とは

リノベーション賃貸とは、築年数の経った物件に対して、内装だけでなく設備や間取りを含む大規模な改修を行い、物件価値を高める手法のことです。

  • 空室対策として効果が高い
  • 家賃アップ・利回り改善が見込める
  • 長期保有物件の延命にもなる

といったメリットがある一方、工事内容の選定や見えない部分の劣化把握を誤ると、追加出費の発生やクレーム増加につながるリスクがあります。

オーナーが押さえておきたいリノベのメリット

空室改善・家賃アップが狙える

築古物件でも、リノベーションを行うことで物件の印象が大きく変わり、内見時の評価が上がって申し込み率が改善します。これにより空室期間の短縮が期待でき、適切な改修内容であれば家賃を数千円から数万円単位で引き上げられる可能性があるでしょう。

小規模な内装の刷新でも競合との差別化が図れ、フルリノベーションを行えば間取りや設備の見直しによって入居ターゲットの幅を広げることもできます。結果として、稼働率の改善と家賃収益の向上を同時に実現しやすくなる点が、リノベーション最大のメリットです。

デザイン性での差別化が行いやすい

デザインにこだわったリノベーションは、物件の第一印象を大きく高め、広告の反応率や内見予約につながる点が大きな魅力です。

特に写真で物件を選ぶ傾向の強い若年層には、統一感のあるコンセプトや写真映えする見せ場をつくることで、競合との差別化がしやすくなります。照明や建具といった小さなパーツの工夫でも印象が変わり、比較的少ない投資で大きな効果を得られるのもメリットです。

さらに、完成イメージを伝えやすいデザインは、ステージングや写真撮影との相性も良く、反響の底上げにもつながります。

設備投資が入居満足度・長期入居につながる

設備が古い物件では、入居者は日々の生活で小さな不安や不便を抱えがちです。給湯器の調子が悪かったり、水回りのトラブルが続いたりすると、「次の更新はやめておこう」と心が離れてしまいます。逆に設備をしっかり整えておくと、その不安が消え、「ここなら安心して暮らせる」という気持ちが生まれます。この“安心感”こそが長期入居につながる大きな要因です。

オーナーにとってのメリットも明確です。設備が新しければ故障が減り、急な対応に追われることがなくなります。毎回の修理費や管理の手間が積み上がらないため、結果としてコストも抑えられます。さらに宅配ボックスや録画付きインターホンなど、今の生活に合った設備がある物件は選ばれやすくなり、入居者の満足度も自然と高まります。

住む人が“安心して暮らせる”と感じ、その安心が“長く住んでもらえる”につながり、結果的にオーナーにも“安定収益が返ってくる”。設備投資のメリットは、この一連の流れが成立するところにあります。

リノベーション賃貸でオーナーが失敗しやすいポイント3選

リノベーションは大きな効果が期待できる一方で、判断を誤ると投資が回収できず、むしろ稼働率が下がってしまうケースも少なくありません。オーナーが特に失敗しやすいのは、次の3つのポイントです。

ターゲットを想定せずに“自分の好み”でつくってしまう

多くの失敗例はここに集約されます。入居者が求めていない仕様をつくると、どれだけお金をかけても反応が鈍くなり、結果的に空室期間が伸びてしまいます。

よくあるパターンは、「単身者向けなのに凝った追い焚き機能を付ける」「若者向けなのに渋い和モダンに寄せる」といった、ターゲットの生活や感性とズレた設計です。自身の満足感は得られても、市場が求めていないため反響が伸びず、投資分を回収できないまま家賃を下げざるを得なくなることもあります。

競合調査を怠り“相場から浮いた家賃設定”になる

リノベをすると家賃を上げられるのは事実ですが、“どれくらい上げても許容されるか”は、立地・築年数・間取り・競合物件の設備レベルで決まります。

調査せずに直感で家賃を設定すると、近隣の成約家賃より明らかに割高になり、内見数が激減します。問い合わせが入らず、広告費ばかりがかさんでいき、最終的には値下げを繰り返して利回りが悪化する…という典型的な失敗につながってしまうでしょう。

リノベ後の“理想家賃”ではなく、“市場が許容する家賃”を把握しないことが致命傷になりがちです。

デザインに寄りすぎて“管理のしやすさ”を無視してしまう

見栄えの良さだけを追求しすぎると、管理負担が増え、結果的に収益を圧迫します。例えば、無垢材の床・白系クロス・デリケートな造作棚などは、写真映えはするものの傷がつきやすく、退去のたびに補修コストが膨らんでしまいます。また、特殊なパーツを使った設備は修理に時間がかかり、入居者からの信頼低下につながることもあります。

デザイン性が高いほど「維持が難しい」「修繕費が高くつく」という落とし穴があるため、管理目線を軽視するとリノベの効果がすぐに消えてしまいます。

オーナーが失敗しないための5つのチェックポイント

リノベーションは、正しく判断すれば物件の価値を大きく押し上げる強力な施策です。しかしその効果は「設計前にどれだけ考えたか」で決まります。

以下の5つを押さえておくことで、無駄な投資や空室リスクをグッと減らすことができます。

リノベ前に“誰に住んでほしいか”が明確になっているか

リノベーションの失敗で最も多いのが、ターゲットを決めずに工事だけが先に進んでしまうことです。「いい感じの部屋にしたい」「おしゃれにしたい」という曖昧なまま進めると、設備やデザイン、家賃設定の方向性がバラバラになり、結果的に募集をかけても反響が弱くなりがちです。

たとえば同じ1LDKでも、

  • 単身社会人なら “収納量・防音性・宅配ボックス” を重視しやすい
  • 共働き世帯なら “広めのキッチン・二人でも動ける導線” を評価する
  • 学生なら “家賃とネット設備” が最優先

…と、求める条件はまったく違います。

だからこそ、最初に「この部屋は誰に選ばれたいのか」を決めるだけで、設備の過不足がなくなる、デザインの方向性がぶれなくなる、家賃設定が適正になる、 と、リノベ全体が一気に整理されます。

ターゲットが明確な部屋は、写真を見た瞬間に「これ私の部屋だ」と感じてもらえる強さがあります。

立地・間取りと“ズレた設備投資”をしていないか

リノベの失敗で次に多いのが、物件のポテンシャルと設備投資がズレてしまうパターンです。どれだけ設備を豪華にしても、立地や間取りと噛み合っていなければ、入居者の心には響きません。

よくあるのが、

  • ワンルームなのに高額なシステムキッチンを入れてしまう
  • 駅徒歩15分の物件なのに家賃を上げる前提で設備を豪華にする
  • 築古の狭い3点ユニットに無理やりデザインだけ寄せてしまう

といったケースです。こうした“ズレた投資”は、コストだけが積み上がり、家賃に反映しにくく、競争力も上がらないという最悪の結果を招きます。

大事なのは、物件が本来持つ「勝ち筋」に設備投資を合わせることです。例えば、

  • 「駅近×単身向け」なら → スマートロック・宅配BOX・独立洗面台など“単身の時短”に刺さる設備
  • 「郊外×ファミリー」なら → 収納力・広いキッチン・子どもの生活動線を整えた間取り
  • 「築古×広め」なら → デザインよりも水回り機能のアップデートが優先

このように、“その立地で、その間取りで、そのターゲットが欲しがるもの”をピンポイントで整えることが、最強のリノベになります。

デザインにこだわりすぎて“生活のしやすさ”を犠牲にしていないか

おしゃれな部屋づくりは入居者の心を掴む大切な要素ですが、デザインを優先しすぎると、思わぬ形で暮らしにくさを生み出してしまいます。

たとえば「映える」ことだけを狙った造作やこだわり素材は、実際に住むと使いづらかったり、掃除がしにくかったりすることも少なくありません。さらに、流行のテイストをそのまま取り入れた結果、ターゲットのライフスタイルと合わなくなるケースもよくあります。

魅力的なデザインは武器になりますが、それが「住みやすさ」と両立してはじめて入居者の満足につながります。「この仕様は、毎日の生活でストレスにならないか?」この視点を一度挟むだけで、デザインが単なる見た目ではなく“選ばれる理由”として機能しはじめます。

家賃設定が“市場とターゲットの期待値”に合っているか

リノベ後に最も起こりやすい失敗のひとつが、家賃設定のズレです。せっかく内装も設備もこだわったのに、「思ったほど反響がない…」というケースの多くは、このズレが原因になっています。

オーナー側からすると、「これだけ投資したんだから家賃はこれくらい欲しい」という思いがどうしても出てきます。しかし入居者が判断するのは“投資額”ではなく、周辺相場との比較と、目の前の部屋から受ける価値です。ここに乖離が生まれると、どれだけ魅力的なリノベをしても選ばれません。

また、ターゲットによって「家賃に対して何を求めるか」は大きく異なります。同じ5万円アップでも、単身者にとってはハードルが高く、共働き世帯なら許容されることもあります。周辺の競合物件と比べてどこに“優位性”があり、どこが“劣る”のかを冷静に見極めることが、適正家賃を決める鍵になります。

家賃設定は、オーナーが最も感覚的に判断してしまいやすい部分ですが、相場・ターゲット・価値提供の3つが揃った時に、初めて無理のない賃料で長期入居が実現します。感覚ではなく、データとターゲット視点で判断しましょう。

“写真・広告の質”を軽視していないか

リノベに力を入れたオーナーほど陥りやすい落とし穴が、「良い部屋を作れば自然に埋まるはず」という思い込みです。実際には、どれだけ内装や設備を整えても、写真や広告の質が低ければ、その魅力はほとんど伝わりません。

入居者の80〜90%はネットで物件を探し、そこで得る情報は“写真数枚とテキスト数行”。つまり、第一印象のほぼすべてが、写真のクオリティと広告の構成で決まります。ここを軽視すると、せっかくのリノベも「普通の物件」と同じ扱いになり、内見にすら進まないことが多いのです。

一方で、プロカメラマンによる写真や、魅力が伝わる広告文を整えるだけで、クリック率が上がり、内見件数が増え、結果的に家賃も確保しやすくなるというデータも多いです。

リノベの成果は、作った部屋そのものではなく、「市場にどう見せるか」まで含めて初めて価値になるという意識が、オーナーにとって非常に重要です。

まとめ:リノベの成否は“デザイン”ではなく“戦略”で決まる

リノベーション賃貸は、ただ部屋をきれいにしたり、おしゃれに仕上げたりするだけでは成功しません。今回取り上げた「ターゲット設計」「立地との整合性」「優先順位の判断」「家賃設定」「広告の質」という5つのポイントは、どれか1つが欠けるだけで反響が大きく落ちてしまいます。

逆に言えば、これらを一つひとつ丁寧に押さえていけば、大きな投資をしなくても選ばれる部屋をつくることができ、空室改善や家賃アップは十分に実現できます。

リノベは“感覚”ではなく“戦略”です。立地・ターゲット・投資額・家賃・広告のすべてをつなげて考えることで、賃貸経営は驚くほど安定します。

そして最終的に成果を生むのは、派手なデザインではなく、入居者にとって「ここに住みたい」と思える理由を積み重ねることです。

少額の改善でも、正しい順番で施策を打てば結果は変わります。そのための基盤づくりとして、この5つのポイントをぜひリノベ計画に役立ててください。