日本は高齢化が進んでおり、これからも長生きする人が増えていきます。長生きしても安心して生活するためには、住宅をバリアフリーにしておく必要があります。
しかし、住宅をバリアフリーにするためには、リフォーム代が掛かるためリフォームに踏み切れない人も少なくないはずです。
国や地方自治体には、バリアフリーへのリフォームをする際に補助金が出る制度が設けられているため、うまく活用すると支払わなければならないリフォーム代を減らせる可能性があります。
本記事では、バリアフリーリフォームに利用できる補助金の種類をわかりやすく整理しました。記事の後半では、補助金を使う際の注意点や実際の活用事例もご紹介します。これからバリアフリーへリフォームを考えている方は最後までご覧ください。
バリアフリーリフォームで使える補助金制度
バリアフリーへのリフォームで使用できる補助金制度には主に以下の4つがあります。
- 介護保険
- 子育てエコホーム支援事業
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- 自治体独自の補助制度
それぞれの補助金制度について詳しく解説します。
介護保険
介護保険の対象となっている家族がいる場合には、介護保険の住宅改修費助成制度を使用してバリアフリー工事にかかる費用の一部を補助してもらうことが可能です。
介護保険の要支援から要介護の認定を受けている方で、住んでいる住宅をバリアフリーにするために手すりを設置したり、段差を解消したりする際に上限20万円まで補助金が受けられます。
たとえば、手すりの取り付けや段差の解消、床材を滑りにくいものへ変更する工事、和式トイレから洋式トイレへの交換などが該当します。
介護保険制度の補助金を使用してリフォームする場合には、ケアマネージャーに相談した上で、工事をする前に市区町村の役所に届ける必要があるので注意が必要です。
子育てエコホーム支援事業
子育てエコホーム支援事業は、省エネ性能の高い住宅の取得やリフォームを支援するために制定された国の補助金制度です。
子育てエコホーム支援事業を使用してバリアフリーへのリフォームに対する補助金を受けるためには、以下の3種類の「必須工事」のいずれかを同時に行う必要があります。
- 窓やドアなど開口部の断熱改修
- 外壁や屋根など外周部の断熱改修
- 高効率給湯器などエコ設備の設置
バリアフリー工事だけを単独で行っても対象にならない点には注意が必要です。
補助金の上限額は世帯の属性や住宅の条件によって異なります。
- 子育て、若者夫婦世帯:上限30万円/戸
- その他の世帯:上限20万円/戸
- 中古住宅を購入してリフォームする場合:上限60万円/戸
- 長期優良住宅化リフォームを行う場合:上限45万円/戸
また、必須工事にあわせてバリアフリー改修を行う場合には、リフォームの内容によっても細かく補助額が決められています。
- 手すりの設置:5000円/戸
- 段差解消:7000円/戸
- 廊下幅等の拡張:28000円/戸
- 衝撃緩和畳の設置:20000円/戸
なお、対象となる工事の合計費用が5万円未満の場合は、補助金を申請できないため事前に条件を確認しておくことが大切です。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、住まいの性能を高めるリフォームを対象に国が支援を行う制度です。補助の対象となるのは、主に次の3つの目的で行う工事です。
- 住宅の寿命を延ばす改修
- 省エネルギー性能の強化
- 耐震性の改善
この制度を使ってバリアフリー改修の補助を受けるには、上記3つの必須工事とあわせて工事をしなければならないため、バリアフリー工事だけでは申請できません。
補助金額は条件によって異なりますが、おおむね80万円から160万円の範囲で、工事費用の3分の1が支給されます。ただし、総額が10万円以下の工事は対象外となる点に注意が必要です。
長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助を受けるためには、事前に建物状況調査を受けたり、維持保全計画を作成したりしなければならないため、他の補助金制度と比べると手続きが複雑になるため、リフォーム会社などに相談しておく必要があります。
地方自治体の補助金制度
国の制度だけでなく、地方自治体で制定しているバリアフリーリフォームへの補助金制度があります。
例えば、東京都には「東京都高齢者自立生活支援モデル事業」という補助金制度があり、介護保険の対象外となる工事についても補助を受けられる仕組みがあります。
また、京都市の「高齢者等住宅改修費助成事業」では、介護保険の認定を受けていない高齢者や障がい者がいる家庭において、住宅のバリアフリーをする際に補助金が支払われます。
このように、補助の内容や条件は自治体ごとに異なるため、リフォーム工事をする前に確認するようにしておきましょう。
補助金制度によっては、他の制度と併用して申請が可能な場合もあるため、事前に市区町村に相談して確認してください。
バリアフリー改修で補助金を利用する際のチェックポイント
住宅をバリアフリー化するにあたって補助制度を活用する場合は、以下の4つのポイントを事前に抑えておく必要があります。
- 工事前に必ず相談を行うこと
- 複数の補助制度を組み合わせられる場合があること
- 提出書類や申請スケジュールの管理
- リフォーム業者の選定は慎重に
これらのポイントについて、以下で順を追って解説していきます。
工事前に必ず相談を行うこと
バリアフリーへのリフォームをして補助金を申請したい場合には、リフォーム前に市区町村や担当者に相談しておく必要があります。
全ての補助金制度が、リフォーム工事前に申請をしておかないと補助金が受けられない条件となっているためです。
また、工事内容により補助金が受けられない可能性があるため、どのような工事を行うかを相談し、使える補助金制度がないかを確認しておくと良いでしょう。
複数の補助制度を組み合わせられる場合があること
バリアフリーへのリフォームを行い補助金を申請する際には、複数の補助金制度が使えないかを確認しておきましょう。
たとえば、介護保険による助成と自治体独自の補助を組み合わせて使えるケースがあります。介護保険の上限額を使い切ったあとに、追加の工事を別の制度でカバーできる可能性もあります。
ただし、自治体によっては併用が認められない場合もあるため、工事前に相談するようにしましょう。
提出書類や申請スケジュールの管理
バリアフリーへのリフォームで補助金を申請するためには、それぞれの補助金制度によって提出する書類が違うため、必ず確認し、早めに書類を揃えておくと安心です。
工事前に書類を提出しなければならない場合が多いため、書類の提出が遅れるとその分工事の完了も遅れてしまいます。
市区町村の窓口や担当者に必要な書類を聞いておいて、すぐに提出できるように準備しておきましょう。
リフォーム業者の選定は慎重に
バリアフリーへのリフォームをする際に補助金を使用するのであれば、リフォーム業者の選定も慎重に行う必要があります。
バリアフリーへのリフォームに慣れた業者であったり、補助金の申請を代行してくれる業者であったりを選ぶ必要があるためです。
また、子育てエコホーム支援事業などの補助金制度は、事務局に登録されている業者を通して申請しなければ補助が受けられないため、事前に確認しておきましょう。
複数のリフォーム業者に見積もりを依頼して、比較するようにしましょう。
補助金利用イメージ
バリアフリーへのリフォームで補助金を使用したらどの程度の支払いになるかがイメージできない方も少なくないはずです。ここでは、以下のそれぞれの補助金を使用した場合の事例を紹介します。
- 介護保険を使用した場合
- 子育てエコホーム支援事業を使用した場合
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業を使用した場合
申請者の条件やリフォーム内容を解説しつつ、実際に掛かるコストを紹介します。
介護保険を使用した場合
申請者:80代女性で要介護1を持っている。トイレまでの移動や和式トイレでの動作に難しさを感じている
リフォーム内容:トイレまでの7mに手すり設置、トイレ前の段差解消、和式トイレから洋式トイレに変更
- 工事費用:220000円
- 補助金額:200000円
- 自己負担額:220000-20000円=20000円
介護保険の場合には上限20万円まで補助が出るため、支払うコストとしては、20万円を超えた分のみとなります。20万円を下回る場合には支払うコストが無くなります。
必要な工事に優先順位をつけて、20万円を越えないようにしておくとコストを掛けずにリフォームが可能です。
子育てエコホーム支援事業を使用した場合
申請者:20代夫婦、子供1人。親との二世帯同居とのため、省エネリフォームとバリアフリーリフォームを検討
リフォーム内容:玄関ドアの交換、窓の交換、段差解消、浴室の引き戸変更
- 工事費用:1200000円
- バリアフリー改修工事費用:350000円
- バリアフリー改修工事への補助額:22000円
- 補助額合計:572000円
- 自己負担額:628000円
子育てエコホーム支援事業を使用する場合には、省エネリフォーム必須となり、バリアフリー工事は付随工事となるため、バリアフリーリフォームだけでは申請できません。
子育て世帯や若者夫婦世帯であれば補助額も高くなるため、対象の場合には検討してみると良いでしょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業を使用した場合
申請者:60代夫婦、築30年の住宅の老朽化が進んでいるためバリアフリーを含めた大規模なリフォームを検討
リフォーム内容:耐震補強工事、外壁・屋根の断熱工事、手すりの設置、間取りの変更
- 工事費用:1200万円
- 補助金額:160万円
- 自己負担額:1040万円
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、住宅の大規模な改修を支援するための補助制度です。バリアフリー単体での工事では補助金の対象とはなりませんが、省エネ改修や耐震補強などと組み合わせて行う場合には補助金の申請が可能になります。
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、インスペクションや維持保全計画の策定が必要になるため専門知識を持ったリフォーム会社に工事を依頼しなければなりません。
まとめ
バリアフリーへのリフォームで使用できる補助金制度は主に以下の4つがあります。
- 介護保険
- 子育てエコホーム支援事業
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- 自治体独自の補助制度
それぞれの補助金制度には、補助を受けるための条件や手続きがあるため、工事前に必ず手順や必要な書類を確認しておくようにしましょう。
補助金制度を使用する場合には、工事前に申請を済ませておく点やリフォーム会社の選定が重要なポイントになるため、すぐに工事を始めるのではなく、よく調べて申請するようにしてください。
また、費用などのコストがわかりづらい場合には、他の事例を確認しつつ金額や工事内容をイメージしておくと良いでしょう。